読売新聞を開くと、私が真っ先に読むコーナーが、「人生案内」。これを読むことが毎日の習慣になっています。
そんな中でも私のお気に入りの回答者、いつもすっきり、時に厳しいストレートで迫力ある回答をしている最相葉月(さいしょうはづき)さんについて調べてみました。
最相 葉月(さいしょう はづき)プロフィール
本名 | 不明 (最相は母方の旧姓を用いた筆名) |
生年月日 | 1963年11月26日 |
出身 | 東京都に生まれ、3歳から25歳まで神戸に住む |
出身大学 | 関西学院大学法学部 |
経歴 | 広告会社 出版社 編集事務所 |
肩書 | ライター 編集者など |
配偶者 | 20代後半で離婚、30代後半で再婚 |
人生案内の回答者欄には「最相葉月(ライター)」と記されています。
最相さんは名刺に肩書は記さない主義。
それは人の属性を肩書で決めつけてしまいがちな風潮への意志申し立てによる、とのこと。
著書「最相葉月 仕事の手帳」(日本経済新聞出版社)によると、1989年の春(25歳)に上京し、求人情報誌で見つけた自然科学系の小さな出版社で働きだしたのが、出版界で働いたスタートでした。
プライベートでは20代で結婚しますが、のちに離婚。30代後半で再婚されています。
人生案内の回答者はいつからやってるの?
2009年より回答者として登場しています。
現在59歳(2022年時点)の最相さんが46歳ころから回答していることになります。回答頻度は月2~3回です。
ちなみに読売新聞の「人生案内」は大正3年(1914年)の「身の上相談」を起源とする歴史のある人気コーナーです。
最相さん自身は昔からニッポン放送の「ラジオ人生相談」と、この読売新聞の「人生案内」のコーナーの大ファンであり、回答者に選出された際は大変嬉しかったそうです。
どのように質問を選んでいる?
ミシマ社による、「みんなのミシマガジン」での最相さんへのインタビューによると、質問の選び方は担当者から相談の手紙がいくつか送られてきて、そこから最相さん本人が回答できそうだと思うものを選ぶそうです。
ちなみに相談者は誰に回答してもらうかを選ぶことはできません。
まずは読売新聞の担当者によって、最相さん向きだと思われる相談をある程度、選別されているのですね。
相談者は回答者を選べないわけですから、最相さんに回答してほしくても希望は出せないということです。
どうやって回答を考えるの?
上記のインタビュー記事によると、まずピックアップした相談に目を通して放置します。
そのまま気づいたことが浮かんだらメモするを繰り返し、答えられそうだと思ったら回答に取り掛かります。
自分を入れずに職人的に回答することを心がけているそうです。
相談者は悩んでいるときは視野が狭くなりがちなので「相談者に見えていないものは何か」を考え、違った角度からこの問題を見てもらえるように職人的な感覚でその「角度」を考え、回答することを心掛けているそうです。
しかし相談者の生命の危機に関わるような内容の場合は、行政や法律手続きを伝えるようにしているとのこと。
たしかに悩んでるときは自分の視点からしかその問題を捉えられないので、この「相談者に見えていないものは何か」という視点は、今後自分の悩みを解決したいときに、大いに役立ちそうです。
そして、この違った角度から見るという角度そのものが、最相さん独特の刺さる回答なのだと思います。
臨床心理士との対談で語っていた事とは?
また、最相さんが臨床心理士の佐々木玲仁さん(九州大学准教授)と対談されているYouTubeチャンネル「ひねもす」で語っていたことで印象的だったのは、あの迫力あるストレートな回答は本人曰く「格闘技みたいなもの」という言葉!
こんな風に回答することに対して本気で向き合っている分、初対面の人からはこの文面での印象から「怖がられる」ことがあるそう。
なんとなくわかるような気がします。最相さんに向き合ったらピリリと気持ちが引き締まりそうですよね。
それにしても紙面上では相談内容は短く編集されていますが、実際は便箋10枚以上になるような相談もよくあるようです。
それに対して、端的に尚且つストレートに刺さる回答を導き出すのは大変なことと思います。
本業もすごい!
最相さんはノンフィクションライターとして活躍され、たくさんの書籍を出版されています。
テーマは主に
- 科学技術と人間の関係性
- スポーツ
- 教育
- 精神医療
など多岐にわたります。
また、たくさんの賞も受賞されています。
単書としては以下の書籍が出版されています。
- 『高原永伍、「逃げ」て生きた! 風の人35年間のバンク・オブ・ドリームス』徳間書店
- 『絶対音感』小学館、新潮社(小学館ノンフィクション大賞)
- 『なんといふ空』中央公論新社、PHP研究所
- 『青いバラ』小学館、新潮社、岩波書店
- 『あのころの未来 星新一の預言』新潮社
- 『最相葉月のさいとび』筑摩書房
- 『東京大学応援部物語』集英社、新潮社
- 『熱烈応援!スポーツ天国』筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉
- 『いのち 生命科学に言葉はあるか』文藝春秋
- 『星新一 一〇〇一話をつくった人』上、下 新潮社(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞、日本SF大賞、日本推理小説作家協会賞、星雲賞ノンフィクション部門)
- 『ビヨンド・エジソン 12人の博士が見つめる未来』ポプラ社
- 『セラピスト』新潮社
- 『最相葉月 仕事の手帳』日本経済新聞出版社
- 『調べてみよう、書いてみよう』講談社
- 『れるられる』岩波書店
- 『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』岩波書店
- 『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』ポプラ社
- 『理系という生き方 東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』ポプラ社
アマゾンの書籍のレビューを見るとおおむね評価が良好で、読者の満足感が大変高いことがうかがえます。
現在私も『最相葉月 仕事の手帳』(日本経済新聞出版社)を読んでいます。
主に最相さんの編集の仕事に携わるようになったスタートから現在のご活躍に至るまでの、最相流の仕事の仕方が書かれた本だと認識しました。
ライターとしての取材対象の人間への付き合い方、接し方。沈黙を恐れずどう話を引き出すか。
その為に細心の注意を払って空気をどう読むか。
読んでいるだけで、私まで緊張に包まれるような感覚に襲われました。
そして取材への真摯で貪欲な姿勢。
資料集めから理解へ落とし込むまでの膨大な作業量。
文系の著者が理系の科学を書くということ。
これができる最相さん、やはりただものではない。
映画の原案にもなっている!
最相さんの著書『なんといふ空』(中央公論新社、PHP研究所)は、2001年長澤雅彦監督による映画『ココニイルコト』の原案となっています。
長澤雅彦監督にとってはこの作品が初の劇場用映画監督作品で、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞・ヨコハマ映画祭新人監督賞・藤本賞新人賞などを受賞しました。
また、この映画が初主演となった真中 瞳も(現在は東風 万智子に改名)この作品で、キネマ旬報賞新人女優賞などの数々の新人賞を受賞しました。
ストーリーは広告代理店に勤務する駆け出しのコピーライターが主人公なので、最相さんの体験をもとに作られた内容なのでしょうか。
なかなか期待できる作品ではないでしょうか。こちらも鑑賞したいと思います。
人生案内 スッキリ名回答3選!
いよいよここで、私が独断と偏見で選んだ人生案内、最相葉月による名回答3選を紹介したいと思います!
母の数百万 姉がきつく管理(2022年1月8日)
60代の主婦。
2022.1.8 読売新聞
100歳近い母の預金残高が数百万円あることを最近になって知りました。
母のために使いたいと思っています。母は10年ほど施設に入居していますが年金で全て賄っており、年に数十万円たまっている感じです。
私は4人きょうだいの3番目で、母の面倒は姉2人が見ており、お金の管理は次姉が1人でやっていました。次姉はケチで締まり屋。母が服を欲しいと言っても「着るものはあるでしょう」と言う人です。母の年金なのに、いつ母のために使うのでしょうか。次姉は長年1人で管理してきたので、自分のお金と勘違いしているのだと思います。
私としては、家族に孫やひ孫も入れて30人以上で温泉にでも行くのに使うといいかなと思うのですが。母は年齢の割には食欲旺盛で元気です。母が喜ぶお金の使い方って何でしょう?(北海道・J子)
この相談に対しての最相さんの回答が超絶スッキリです。
母親が喜ぶお金の使い方が何かと他人に聞く前に、なぜ直接本人に尋ねないのでしょうか。子どもに残すつもりなのか、どこかに寄付しようと思っているのか。お母様にはお母様の考えがあるはずですよ。
2022.1.8 読売新聞
次姉がお金の管理をしてきたそうですが、何にいくら使ったかもわからないような浪費家でなくてよかったではないですか。お母様もそんな娘だから管理を任せたのでしょう。新しい洋服を買わないのが不満なら、あなたが買って差し上げればいいでしょう。介護用品の購入や施設の諸費用の手続き、銀行や行政機関とのやりとりなど、お金に関する事務作業は一切、次姉がやってきたのです。この先もいつまとまったお金が必要になるかわからないと考え、万が一のために節約してきたのでしょう。感謝されこそすれ、非難される筋合いはないはずです。
そんな姉をねぎらいもせず、明細を要求し、ケチ呼ばわりした上で蓄えを一族の温泉旅行に使ってしまおうだなんて、介護を知らない無責任な人の放言でしかありません。10年も施設に暮らすお母様に、きょうだいでお金を出し合って旅行をプレゼントしようという発想すらない。頭を丸めて出直してください。
かつて、このコーナーにおいて回答者が相談者に対して「頭を丸めて出直してください」といった例はあったのでしょうか。質問者さんが見えていない視点は、普段の介護で大変な姉の苦労。最相さんはそこを指摘しているのです。新聞読者全員が、この回答にうんうんその通りだ!すっきりしたのではないでしょうか。痛快でした。
山歩き 世話役の怒り買う(2019年6月11日)
70代女性。
2019.6.11読売新聞
山歩きの仲間を失いました。その人はリーダー的な存在で、登山のプラン作りや、車で送る「アッシー」などをしてくれていました。リーダーが怒った理由は、ガイドを依頼していた山行を、仕事を優先して断ったためでした。また、リーダーは自分の夫に協力してもらいながら、道や登山口などを確認し、事前に案内してくれていました。ところが私は後日、夫とその山に行き、そのことでも彼女を傷つけてしまいました。
他の仲間に促されて謝罪の手紙を書き、「時間はかかるが、一緒に歩けると思う」と返事をもらいました。でもその後の山行で、私の居場所はありませんでした。彼女はいつも明るく、そのためグループの仲間はいつも笑顔いっぱいでした。甘えていた自分が情けなく、失ったものの大きさに戸惑っています。(宮城・O子)
なんだかよくわからない違和感、わかるようでわからない不快感を感じる相談でありますが、最相さんはどう回答するかというと…
サークルの世話役が何をしているかご存じですか。日頃から雑誌やインターネットで情報収集し、みなが楽しめるプランを立てます。出欠を確認し、切符やガイドを手配したり、食堂や宿を予約したりします。大変なのがスケジュール調整で、キャンセル料がかかりますから、よほどの理由ではない限り、やっぱりやめた、は困るわけです。
2019.6.11読売新聞
あなたは彼女に甘えていただけではない。世話役としての彼女の、今挙げたようなおそらく無償の働きを軽んじていたのです。その気持ちは「アッシー」に表れています。車で送迎するだけの使い勝手のいい男性を侮蔑するバブル期の流行語なので、私はついあなたは独身で、リーダーは男性と思いこんだほどです。
彼女は人と人をつなぎ、素晴らしい景色や珍しい草花との出会いを演出する卓越したリーダーシップの持ち主なのでしょう。そこに敬意を払っていなかったことが彼女の怒りの根底にあるに違いありません。案外根は深く、修復には時間がかかるかもしれません。申し訳ないと思うなら、次は自分が調整役を手伝ってみる、それを彼女に相談するところから始めてみてはどうでしょう。これまで任せきりにしてごめんなさいと詫びながら。
そうなんです。相談を読んだ時の違和感、不快感はこの相談者が、女性の世話役さんを「アッシー」呼ばわりしている点や、謝罪の手紙を「仲間に促されて」書いている点などです。質問者さんが見えていない、サークルの世話役の大変さを最相さんはよく理解されている。この質問者に対して想像力や気遣いが欠けている点を最相さんは指摘されているのだと思います。爽快な回答でした。
夫と別居 子からは同居拒否(2019年9月18日)
60代無職女性。
2019.9.18読売新聞
今後のつらい人生をどう生きればいいのでしょうか。結婚して2人の子どもに恵まれました。しかし、夫は私を一人前に見てくれませんでした。10年ほど前に母が亡くなり、喪失感を感じました。それから夫との関係が悪くなり、娘と家を出ました。娘が独立し、一人暮らしに。しかし昨年体をこわし、解雇されました。いったん実家に戻りましたが、なんとか出ようと、東京にアパートを借りました。
東京で暮らす息子と娘に一緒に暮らしたいと話すと、娘に「一人暮らしをしたいし、結婚もしたい」と言われ、「生活保護で暮らせば」と突き放されました。今さらですが別居しなければよかったと悔やんでいます。息子と娘のそばで、生活保護でしか暮らせないのは惨めです。どうしたらいいのか、心の整理がつきません。(A子)
なんだか、依存的な重たい雰囲気を感じる質問者さんです。最相さんの喝が効きそうな相談内容ですね。
回答はこちら
あなたの問題は何だろうと考えました。別居理由も東京に住む理由も、どちらも釈然としないのです。母を亡くした喪失感で夫との関係が悪化したのであれば、原因はあなたの心にあります。経済的に不安なのに、物価の高い東京に移り住むのは矛盾した行為です。子どものそばにいたいのはわかりますが、人生の転機にある彼らへの配慮が感じられません。生活保護は惨め、別居しなければよかっただなんて、置き去りにされた夫の感情は眼中にないようです。心の整理ができないのは、自分中心でしか世界を見てこなかったからではありませんか。
頼る人を失った今は、己の心に正対するよい機会です。これまで自分が誰に何をしてもらったか、時系列で思い出してメモしてみてください。町を見回し、世話になった人たちの顔を思い浮かべてください。彼らに感謝を伝えましたか。あなたは彼らに何をして差し上げましたか。
2019.9.18読売新聞
お金がなければ生きられませんが、お金だけでも生きられない。自分が何をないがしろにしてきたか気づいたとき、目の前の景色は変わり、少しずつでも一人で歩けるようになるでしょう。生活保護はそんなあなたの杖となり、自立への勇気をくれるはずです。
見事に相談者さんの視野の狭さを指摘されています。別居された夫はどう感じているか、同居を希望された子供たちはどう思うかの他者への視点が無く、自分のみじめさのみに視点が偏っていることを厳しい表現で伝えているのだと思います。
最相葉月が回答した人生案内が書籍化されている!
なんと人生案内の最相さんの回答を集めたものが、書籍化されています。
2015年に第一弾『辛口サイショーの人生案内』
2021年第2弾『辛口サイショーの人生案内DX』がミシマ社より出版されています。最相さんの回答ファンは私だけではないのだと確信しました。
まとめ
読売新聞「人生案内」の回答者、最相葉月さんは凄腕のノンフィクションライターであり、たくさんの書籍を出し、尚且つ受賞している作品もあることがわかりました。映画の原案になっている作品もあるなんて驚きました。
人生案内での事実を俯瞰して見る目、鋭さの訳は相談者の見えていないものは何かを考え、違った角度から問題をとらえるという視点も目から鱗でした。そして最相さんを回答者に抜擢した読売新聞の担当者も、すごく良い視点を持っていると思います。
この人生案内コーナーは私も大好きなコーナーで回答者が最相さんだとわかると嬉しくて、一語一句じっくり読み、スッキリしたりうなずいたり感銘を受けています。その厳しい回答に質問者さんは自分の見えていなかった狭い視野の外に気づき、目が覚めることも多いのではないでしょうか。
おまけ
スピ好きな私は、占いでいうと最相葉月さんはどんな感じの人なのか調べてみました。厳しいイメージのある最相さんですが実際はどうなのでしょう。
占術 | 結果 | 性格 |
星座 | いて座 | ドライであっさりとした性格。冷静な観察力や分析力は人並み外れている。思ったことや感じたことをそのまま口にしてしまう。 |
数秘 | 11 | とにかく前向きで、自分の理想や考えを実現させるためなら身を粉にしても働く。興味がわいた物事は、すぐ試してみたり、現地に赴いてみる。 |
動物占い | コアラ | とてもスピーディーに行動して、大きな成功をつかむことができる。聡明で勝負勘が強い人。 |
細木数子(六星占術) | 土星人(-) | 精神の世界に住み非常に理想が高い人。また、その想像力の豊かさから、卓越した表現力をもっているが言葉以外の表現はとても苦手。 |
星ひとみ(天星術) | 満月 | 想像力豊かな反面、現実的な面を持ち合わせたロマンティスト。疑り深く慎重な面も持っている。 |
ゲッターズ飯田(五星三心占い) | 銀の羅針盤 | 洞察力が鋭く、上品で礼儀正しく、何事も几帳面に行う丁寧な人。 |
暮れの酉(鳳凰数術) | 実は目立ちたいキツネ | 具体的な理想があり、そこに近づくにはどうしたらいいのか、実際に考えて行動する頭の回転の速さも持ち合わせ、努力を惜しまない、情熱家。 |
法演(MITSURI) | 暴露数9 | こだわり強く、まわりに流されることは少ない。自分の気持ちを大切にしたいと思うタイプで感受性も鋭く、他の人にはちょっとまねできないセンスの良さがある。 |
オッティモちゃん(宇宙占術RPU) | 革命家 | 周りを巻き込む革命家。周りも巻き込んで突き進む、台風の目のような人。些細なことは蹴散らして、パワフルに堂々とふるまう。他人のために尽力できる。 |
斗弥(属性開抛) | ウズメ 鎮星 水 | 人生は楽しむためにあるをモットーに好きなことをして生きていきたいという気持ちが強い。 |
今後のご活躍を期待しています!