先日放送された美の壺スぺシャル(NHK)「レトロ建築」に出演されたグラフィックイラストレーターのマテウシュ・ウルバノヴィチさん。
日本のレトロ商店をやさしく丁寧なタッチの水彩画で描き、その感性に引き込まれた視聴者も多いのではないでしょうか。
今回はマテウシュ・ウルバノヴィチさんについて、深堀りしていこうと思います。
なぜ日本語がペラペラなの?経歴は?
番組内では全く通訳が必要のないくらい、日本語が完璧だったマテウシュ・ウルバノヴィチさん。
来日12年になるという事から、日本語が堪能なのも頷けます。
一体どんな経歴なのでしょう。
生まれはポーランド。1986年生まれの36歳です。(2022年現在)
中学や高校ではパソコンでプログラミングをする電子工学を学びます。
そこでパソコンで絵を描くことを覚えました。
大学は日本とポーランドが共同で設立したポーランド日本情報工科大学情報科で電子工学を学びます。
そこではデジタルイラストコースがあったことから、イラストでの表現を学びました。
その後、日本の奨学金制度に合格。
夢だったアニメや漫画を学ぶため、日本の大学・大学院に留学し神戸芸術工科大学大学院を卒業しました。
ここではマンガのゼミに所属し、さらに表現の腕を磨きます。
映画「君の名は。」の背景美術を担当したきっかけは?
マテウシュ・ウルバノヴィチさんは2016年の大ヒットアニメ映画である新海誠監督「君の名は。」の背景美術を担当しました。
あの美しい映像の、背景画を担当されていたのがマテウシュ・ウルバノヴィチさんだったとは驚きますね。
新海監督との接点は何だったのでしょう。
きっかけは、日本に留学していた時に、講義に来ていたアニメ監督の新海誠先生から声をかけられたことでした。
「会社の見学に来ないか」と誘われ、そのまま面接を受けた結果「君の名は。」の背景画を担当することになりました。
日本の大学院まで行って、かなりの腕を磨いていたマテウシュ・ウルバノヴィチさんを新海監督は見逃さなかったということなのでしょう。
そして大学院を卒業して、新海誠監督の会社で背景画を担当するようになりました。
その後、独立するまで4年間、新海監督の下で働きました。
妻は日本人の漫画家
番組で紹介されていたのは日本人の妻、香苗さん。
奥さんが日本人というのも、日本語が堪能な理由ですね。
香苗さんは東京出身で、職業は漫画家でイラスト系のフリーランスクリエイター。
お二人とも絵を描く仕事をしているのですね。
ウルバノヴィチ香苗という名義で「ぽんこさんの暮らしのはてな?」(ミシマ社)が出版されています。
マテウシュ・ウルバノヴィチさんの作品集は販売されてる?
番組で紹介された、日本のレトロ商店の水彩画のイラストは美しくて見入ってしまいました。
じっくり作品を鑑賞したいと思った方も多いと思います。
作品はデジタルではなく手書きです。
万年筆で輪郭を一発勝負で描き、色は水彩絵の具で陰に深みを出すように重ね描きしており、イラストの印象はとても深みがあります。
マテウシュ・ウルバノヴィチさんの作品は多数出版されています。
そのなかでも2018年の画集「東京店構え」は見応えがあり魅了されます。
外国人が描く大正から昭和のレトロな商店街を見て日本人が懐かしさを感じるというのは、なんとも不思議な感覚ですし、嬉しいですね。
そもそも「レトロ」とはどういう意味なのでしょうか。
レトロとは「懐古的。懐古趣味。郷愁に誘われる気持ち。」という意味です。
英字表記ではRetroと綴りますが、retrospective(回顧)の略語です。
単に古いものというのではなく、「懐かしい気持ちを引き起こすもの」というのがポイントです。
そのため、現代の人たちからレトロと呼ばれるものは、大正から昭和のころを思い起こさせるようなものであることが多いです。あまりに古すぎて何の郷愁も引き起こさないものはレトロとは呼ばれません。
引用 https://meaning.jp/posts/2408 意味解説ノート
マテウシュ・ウルバノヴィチさんはレトロ商店について
「(レトロ商店の看板・店構えについて)それぞれの店が自分の顔として街に向けてやっている。(自分は)その顔の店の似顔絵を描いている」
「(その店が)商店街に合わせて、せめてフロントを格好よくできたら・・・とすごく工夫して作られているのがすごく大事で、すごく好き」
と番組の中で語っています。
遠い異国に住んでいたころ、アニメで見てきた日本の風景が目の前にあることがとても嬉しかったというマテウシュ・ウルバノヴィチさん。
外国人だからこそ、近代化していく東京の街の風景の中にひっそり残るレトロ商店が、とても新鮮に映り、絵で描き残しておきたいという熱い思いが我々日本人より強いのかもしれませんね。
YouTubeに制作の過程を公開中!
マテウシュ・ウルバノヴィチさんは作品を描いている工程を頭上からカメラで撮影しYouTubeで公開しています。
視聴回数も1万越えのものが多く、世界中から注目されているのがわかります。
まとめ
今回は、美の壺スぺシャル(NHK)「レトロ建築」で出演されたグラフィックイラストレーターのマテウシュ・ウルバノヴィチさんを調べてみました。
水彩画で描く日本のレトロ商店。
日本人が懐かしく感じるやさしいタッチで思わず画面に見入ってしまいました。
ポーランドで生まれ、もともとは電子工学を学んでいたマテウシュ・ウルバノヴィチさんでしたがパソコンでイラストを描くことを学びます。
その後、日本に留学し大学院を卒業します。
大学院ではマンガのゼミに所属し、さらに表現の腕を磨きました。
そこで声を掛けられ新海誠監督の映画「君の名は。」の背景美術を担当し、現在は精力的に日本の街の風景を水彩画で描き、日本人の心を掴んでいます。
日本人の妻でイラストレーターの香苗さんの存在も大きく、日本語がペラペラなのは日本の風景が大好きな気持ちと、奥さんの影響もあるのかもしれません。
多数のイラスト集が出版されているのでゆっくり鑑賞するのもおすすめです。
今後のご活躍を期待しています。